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第5回SDGsオープンラボ:救急診療、新型コロナウィルスと画像診断<ゲスト講師:聖マリアンナ医科大学 松本医師>

こんにちは、トランスコスモスSDGs委員会 オープン社内報 副編集長ワダユウです。

今回は、2021年4月22日(木)にオンライン形式で開催された、SDGsオープンラボの2021年度第5回目について報告します。
今回は74名の社員が参加しました。

テーマは「救急診療、新型コロナウィルスと画像診断」です。

講師は、聖マリアンナ医科大学(以下聖マリ)の松本純一さんです。松本さんは聖マリの救急救命の医師で、新型コロナウィルス対応の最前線に従事されており、さらに画像診断の第一人者としても活動をされています。

今回は、新型コロナウィルス診断・治療の現状と、画像診断の最新テクノロジーの状況などを勉強していきます。

まずは、救急診療における画像診断とはどういったものか、理解を深めていきます。

救急車で患者が運ばれてくるとき、現場での所見での症状が病院救急側に伝えられますが、CT(体の輪切り写真)写真から骨折や体内出血などの状態を見ることができ、なぜ症状となっているのかや、具体的な症状が起きた原因がわかってきます。

救急診療においては素早く患者の画像を撮影し、画像診断を行うことによって客観的な状況を把握し適切な治療方針を決めることがとても重要です。

画像診断はかなりの専門的知識が必要とされ、日本でもここまで細かい画像の読影を行うことができる医師は限られています。画像を院外の医師へ送って読影を依頼することも、個人情報の保護等の観点から進んでいない状況です。

続いて、聖マリアンナの新型コロナウィルスにおける画像診断などについてです。

重症化する患者のCTを撮影すると、初期は灰の中に白っぽい影ができており、それが数日の間に影が広がってきます。特に新型コロナウィルスは肺の隅に影が出やすいという傾向があるようです。

新型コロナウィルスの感染者において、多くは軽症・または無症状です。
ではどういった人が重症化しやすい傾向にあるのでしょうか。
そもそも、ウィルスが肺に届くかどうかが重要になってきます。接触感染では粘膜を通して体内に入ってくるものの、肺まで届く可能性は多くないです。やはり空気感染が一番肺に届きやすい感染経路となってきます。

また、鼻呼吸をしているときは、細い鼻孔などを通ってきます。一方、口呼吸は鼻孔より大きい口、直接流入してくることなどから肺に届きやすい状態です。なので、マスクなどで防御することが大切となってきます。

また、肥満体系の人は脂肪により肺の呼吸運動が小さくなります。そうなると入ってきたウィルスを出していく動きが小さくなってくるのでよりウィルスの沈着率が高くなってきます。

3密を避け、マスク・手洗い・うがいが重要な予防策となります。

救急搬送のうち高齢者の割合は6割となっていますが、高齢者は症状の訴え、診察所見や血液検査所見が実際の状態よりも鈍く出る傾向にあります。

高齢者の搬送が増える中で、客観性の高い情報を素早く得られる画像診断を早期に行い、正しい診断から正しい治療に結びつけることが大切になります。
これにより患者の病院滞在時間の短縮、医師の働く時間の短縮にもつながってきます。
救急診療においては画像診断はとても重要な位置づけとなっていますが、画像診断医の数が圧倒的に足りていない現状があります。

続いて、画像診療プロセスのアウトソース化についてです。

90%以上の医師が、画像診断の遠隔コンサルテーションサービスが必要と考えており、救急の現状を考えると今後必要不可欠な仕組みでありますが、
・今までそういったものがなくてもやって行けたのに必要なのか?
・コストがかかるのでは?
・データ漏洩リスクがあるのでは?
・常勤の画像診断医が対応できるのでは?
・外部の知らない医師に相談できない
などの理由からなかなか進んでいない状況です。さらに、病院という組織は、
・古いシステム
・医療行為・事務面ともに無駄な労力がかかっている
・ビジネス感覚を持った医師が少ない:目の前の患者で頭がいっぱい、現場たたき上げの院長
・診療報酬に頼ったギリギリの経営
このようなマインドセットを変え、救急の画像診断プロセスのみならず病院という組織を適切な形に変えていく必要があります。

AIや最先端の医療システムは、研究自体は進んでいるものの、実際の医療現場ではまだまだ実用化が進んでいません。国公立の大学病院など研究費が集まりやすい大学はそういった最新技術の研究・導入が進みやすいですが、多くの一般病院では財源面・リソース面が厳しく、最新技術を積極的に研究・導入するところまで至らないようです。

新型コロナウィルス対応や救急医療の最前線に立たれている松本さんのお話は、なかなか知る機会のない興味深い内容で、今回はSDGsの3.すべての人に健康と福祉を、に直接かかわる内容でした。医療業界はIT面や働き方改革など多くの面で改革できる点がありますが、民間企業は医療について専門分野だから、よくわからないからといって回避するのではなく、医療従事者・民間企業・行政が一体となって改革を進めていく必要がありそうです。


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