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【後編】若手の意識変化に組織はどう対応する?「ブラック霞が関」からの脱却の鍵 /千正康裕氏 インタビュー

みなさん、こんにちは!元厚生労働省キャリア官僚の千正康裕氏に、官僚の労働環境について伺っている本シリーズ。
今回は後編をお届けいたします。
※まだの方は是非前編からご覧ください。

前編では、過剰な業務量や、若手の働き方に対する意識変化などの課題についてお話しいただきました。後編は、「ブラック霞が関」が抱える課題の解決に向けて、具体的なアプローチ方法を語っていただきました。


■DXでゆとりが生まれ、課題解決に注力できるように

――中央官庁でDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進することは、業務改善にとどまらず、旧態依然としたマインドを変革することにつながることとお話しいただきました。

官僚たちの姿は世間から見えづらく、なんとなく「冷たい人たち」という印象を持たれているかもしれませんが、彼らも機械ではありません。

実際には、「国民にとって良い政策が届けられているだろうか?」と不安に感じている官僚も多い。そして、日々の業務を通じて国民の生活をより良くできたという実感や、やりがいを求めています。忙殺されて官庁を出られないことで、実際に政策を活用する自治体、民間企業、そしてユーザーである生活者の人たちの考えを知ることが難しいというジレンマに悩まされてきました。

DXが推進されれば、官僚に時間的なゆとりが生まれます。現場訪問がしやすくなり、関係者などとの対話を通じて、政策作りに打ち込めるようになるでしょう。

その結果、国民の実態に即した政策作りにつながりますし、官僚自身のモチベーションも向上。ベテランが若手官僚を育成する環境も整うので、良い政策を届けるための好循環が生まれていくだろうと考えています。


――オペレーション業務の外部委託化は、民間企業をはじめ、行政サービスでも広まりつつありますね。

厚生労働省では、コロナ禍で病院の空床把握システム「G-MIS」を導入。担当者が全国の医療現場と直接やりとりしなくても、医療現場の状況を把握できるようになりました。

システムを通じてリアルタイムでデータや情報を共有できるので、実態把握にかかる時間を大幅に削減。その分、担当者は空いた時間で、データだけでは読み解ききれない部分を直接現場で確認します。従来よりも迅速に対応でき、より最適な打ち手の検討に専念できるようになった好例です。

 

■官民共創でDXが加速する時代へ

――中央官庁でのDX推進のために、重要だと考えていることを教えてください。

キーワードは「官民共創」だと考えています。

官民を行き来する人材が活躍すると、最新技術などの知見が行政にも流入することで、産業育成や政策の改善につながっていく。官民共創により、DXが一気に加速する可能性に期待しています。

すでにデジタル庁等で推進しているような、官民を行き来する「リボルビングドア」(回転ドア)というキャリアを歩む人材は、今後さらに増えていくでしょう。

そうした人材によって、民間企業の労働環境も取り入れられることで、より若手にとって働きやすい職場づくりが加速していくことにもつながります。

それから、国の政策として新しいシステムなどを導入するときに、情報共有が活発になっていれば、入札で調達する製品の性能や特性を比較・検討し、最適な製品を選択できるようになります。国民がより納得できる税金の使い方に近づくのではないかと考えています。

官民共創によって、労働環境の改善というハード面のメリットと、知識の共有というソフト面のメリットの両方が増え、より多くの課題解決が目指せるようになると思います。

官民共創の必要性と期待感は年々高まっていて、民間企業と官僚が関わる機会は少しずつ増えているところです。「一般社団法人官民共創HUB」(注:霞が関の隣の虎ノ門において官民交流の場を設置し、官民勉強会や官民共創に資するイベントの企画・運営等を推進)のような情報交換の場も、霞が関に生まれています。そうした場を活用してより一層、官民共創の動きが活発になってほしいと考えています。


―――千正氏へのインタビュー後半はここまで。DX化による業務効率化と、それがより国民の実態に即した法律作りにつながっていくこと。DX化を推進する上で、官民共創がより重要になることをお話しいただきました。

実は、トランスコスモスでも、自社のDX技術とノウハウを生かしながら、中央官庁の業務効率化をお手伝いさせていただいた実績があります。


■トランスコスモスも中央官庁のDX化に関わっています

トランスコスモスが参画した、環境省における「事業報告書回収支援業務」では、補助金事業の支援期間終了後に発生する、膨大な報告書回収・管理業務を外部委託化。環境省職員の負担を大幅に軽減し、EBPM※実現に貢献しています。

※EBPM(エビデンス・ベースト・ポリシー・メイキング。証拠に基づく政策立案)とは、政策の企画をその場限りのエピソードに頼るのではなく、政策目的を明確化したうえで合理的根拠(エビデンス)に基づくものとすることです。

従来は、事業報告書の回収にともなって、膨大な数の事業者への未提出報告書の催促、手作業での書類不備のチェック、受領した報告書の保管対応などの業務が発生し職員を圧迫。各作業に時間がかかることで、報告書の全貌が翌年度までに把握しきれず、適切な時期での事業成果や効果検証が実施できずにいました。

そこでトランスコスモスではSaaS型システムを導入し、報告書の回収から確認・管理までを一元化。職員の管理コストの削減や、申請事業者の申請コスト軽減に貢献しています。その結果、報告書の内容の精度向上も確認されています。

また、システム導入と同時に、専用コンタクトセンターを開設。問い合わせや不備対応、書類催促などの人手が必要な作業を外部委託することで、タイムリーで確実な回収が実現しています。

その結果、従来は期限内の集計率が2〜30%程度だったところから、2022年度の事業報告書の回収では、92.3%まで向上。 回収する対象事業数も、4事業200件(2022年)から、24事業4,300件(2024年)まで大幅に拡大しました。職員と申請事業者、双方の業務を軽減し、オペレーションの高品質化を達成しています。

トランスコスモスは民間企業だけでなく、行政機関とも連携を進め、DXを加速させています。これからも、社会課題解決を担う行政職員の皆さまの負担軽減や、満足度の向上を目指し、デジタルツールを利用した業務改革を支援していきます。そして、持続可能な社会の実現、地域Well-beingの向上へ貢献していきます。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました!