社員の成長が社会を変える!企業ボランティア推進の可能性
ボランティア活動の魅力の一つは、普段の仕事では得られない多様な経験を積めること。ボランティア活動での体験が視野を広げ、思考を深くしてくれます。実は、企業がボランティア活動を推進する制度もあり、社員の成長や企業の価値向上に大きく寄与しています。
今回は、企業によるボランティア参加推進制度の例を見ながら、その可能性を探っていきたいと思います。
ボランティアは成長とチャレンジの機会
みなさんは、老人ホームへの訪問やごみ拾い活動、行政の主催する地域イベントの運営スタッフなど、個人でボランティア活動に参加されたことはありますか?
ボランティアとは、端的に言えば「自発的に他者や社会のためになる取り組みに参加し、営利を主目的としない活動」のこと。
普段は接点を持たない人たちとコミュニケーションをとったり、慣れない地域で試行錯誤をしたり、興味深い発見に偶然出会えたり、と参加することで世の中を見る解像度が少し上がっていくのも醍醐味の一つ。さらに、「会社ではやったことがない役割を、ボランティアで担当する」という挑戦に出会えることもあります。
趣味や日課としてボランティアを始めたとしても、活動を通じて社会に対してより良い影響(ソーシャルインパクト)を与えているという自信や、やりがいも生まれることでしょう。
そして、ボランティアを実践・継続できるのは、安心して取り組める環境があってこそ。今回は、企業のさまざまな取り組みの中でも、社員がボランティア活動をしやすくなる会社の制度と、そこから生まれる企業価値向上の例をご紹介します。
社会貢献と有給取得促進を両立させる「ボランティア休暇制度」
ボランティア休暇制度は、ボランティアを通じて社員の社会貢献や成長を後押しするための制度。
厚生労働省が本制度を推奨する背景には、「地球環境・地域社会・災害復興などへのボランティア活動の関心が高まっている一方で、実際に参加する機会を作るのが難しい」という現状があります。
そして、企業としては「企業イメージの向上」「人材育成」「会社への帰属意識の醸成・貢献意欲の高まり」などのメリットがあるため、社員のボランティア活動を後押ししたいという狙いがあります。
ここで、アミタホールディングス株式会社が行っている、ボランティア休暇制度を有効活用した事例を紹介します。
同社では、2020年からボランティア等の社会的活動のために利用できる年次有給休暇「ソーシャル・タイム」を設定し、社会活動に参加できる休暇を年20日付与。自治会・PTA等での役職遂行、地域での相互扶助活動、幅広いボランティア活動などを支援しています。
実際にソーシャル・タイムを活用する社員は、清掃ボランティアや子ども食堂、高齢者の買い物の補助などを行うことが多いとのこと。
休暇取得後は、ボランティア活動での学びや体験について社内システム上で報告し、グループ全体の知見として共有。経験を個人の中でとどめることなく、そこで得た知見やノウハウを業務に生かし、企業の制度だからこその好循環が生まれているそうです。
社会課題に関心の高い社員が多いという同社での制度導入は、同社が掲げる「社員のWell-being向上が会社の価値創出力を高める」という考えに基づいているそうです。会社の外で積極的に経験を積みながら、社員一人ひとりが、会社の価値観をより体現できる人材になっていくのではないでしょうか。
給与をもらいながら長期間ボランティア。じっくり貢献&成長へ
社員が給与と福利厚生を受けながら、ボランティア活動に参加できる企業もあります。それは、サステナビリティ先進企業として知られるアウトドア用品メーカーのパタゴニア※。「地球が私たちの唯一の株主」というメッセージを世界に発信し、自社のコアバリューの中に「環境主義 (Environmentalism)」「故郷である地球を守る。」を掲げています。
※パタゴニア・インターナショナル・インク日本支社
同社では、魅力的なアウトドア用品を生み出しながら、環境と人権に配慮したビジネスを展開中。他企業に先駆けて、1994年から環境インターンシップ・プログラムを実施しています。
環境インターンシップ・プログラムは、同社社員が最長2か月間職場を離れ、給与と福利厚生を受けながら世界各地の環境保護グループの活動に参加できる制度です。
給与と福利厚生の保証があるからこそ、長期間にわたり、ボランティアで訪れた先の課題解決に専念。年間で34人の社員、12の店舗と1部門がこのプログラムを利用し、43団体にて約10,000時間のボランティア活動を展開した実績があるそうです。そして、長期間の活動から得られる様々な経験やインスピレーションを身に着け、職場に戻っているそうです。
ボランティアで社会と企業が共に成長する、持続可能な未来
持続可能な社会を実現するうえで、社会に必要とされる企業であるために、企業の存在意義や付加価値を高め、事業の方向性を定めていくのは重要なことです。そして、企業のビジョンを実現していくためには、企業が社員の体験や見識を豊かにする取り組みを支援し、多様な働き方を実現することも欠かせません。
企業の制度として社員のボランティア活動を支援することは、社会の中で得た個人の体験や学びを業務に還元しやすくなり、社会により良いソーシャルインパクトを与える企業作りにつながるのではないでしょうか。
【出典/参照記事リンク】
・ボランティア休暇制度
https://work-holiday.mhlw.go.jp/kyuukaseido/pdf/213.pdf
・アミタホールディングス株式会社のボランティア休暇制度情報
https://www.amita-hd.co.jp/news/230306_tokukyujireisyu2022.html
・パタゴニアの環境インターンシップ・プログラム情報
https://www.patagonia.jp/environmental-internship-program.html
・環境インターンシップ・プログラムについて触れられている取材記事
https://www.wwdjapan.com/articles/1178592
・パタゴニア創業者 イヴォン・シュイナードのメッセージ「地球が私たちの
唯一の株主」
https://www.patagonia.jp/ownership/
・パタゴニアのコアバリュー
https://www.patagonia.jp/core-values/