SDGs目標3「すべての人に健康と福祉を」について考えてみよう!
こんにちは。トランスコスモス公共政策本部の齋藤です。
現在、総務省のローカル5Gを社会実装していくための実証事業に携わっており、聖マリアンナ医科大学救命救急センター(神奈川県川崎市)を舞台にした視覚情報共有等による院内での遠隔医療などに取り組んでいます。
今日は私自身が医療DX・ヘルスケア事業に関わっていることもあり、皆さんにSDGsの中でも特に医療・福祉に関わる課題についてお話したいと思います。
SDGsの17目標の3「すべての人に健康と福祉を」という項目があります。
取り組みのテーマは「あらゆる年齢のすべての人の健康的な生活を確保し、福祉を推進する」ことです。
具体的には、医療を完全に普及させ、すべての人が安全で効果的な医薬品とワクチンを利用できるようにするという取り組みです。
SDGsの前身「MDGs」が策定されて以来、妊産婦の死者や予防可能な病気による子どもの死者は大きく減少していますが、それでも世界中を見渡すと、5歳の誕生日を迎えられずに命を落とす子どもが、年間600万人以上という、とても悲しい現実があります。
基本的な医療や福祉を受ける環境を整えること、その為の取組みがこの目標3(「すべての人に健康と福祉を」)になります。
まさか日本ではそんなことないだろう?と思う方もおられるかもしれません。しかし医療先進国と言われる日本でも乳幼児だけで、年間1654人(2019年厚労省人口動態統計)が亡くなっています。勿論、先天性の疾病などにより現在の医療水準では限界であるというケースも多いでしょう。
10年以上前になりますが、妊婦の救急搬送を巡る事件が相次ぎ、大きな社会問題となった時期がありました、代表的な事例が東京都立墨東病院事件(2008年10月)です。
都内の産科クリニックに頭痛を訴えた妊婦さんが来院され、出産が近い女性に特有の脳内出血が疑われるため、近隣の都立墨東病院に受け入れ依頼をしたところ、週末の当直医が一人であるという理由で受け入れ不能とされました。その後、6施設の医療機関(大学病院など大病院ばかり)に電話をかけましたが同様に困難とのことで、再度、墨東病院に連絡し、ようやく搬送を受けてもらえましたが、この方は3日後に亡くなられました。
この妊婦搬送拒否事件をきっかけに、都市部における救急患者搬送体制の脆弱性についての議論が進みました。
大都市で名だたる大病院が多数あるのに、妊婦一人受け入れが出来ない、そんな状況が僅か10数年前のことです。SDGsの目標に沿った表現すると、完全な医療が提供されていない状態、と言えるでしょう。
その後、救急搬送体制を強化するために都県や市を超えての広域搬送体制の充実、各病院の病床の空き状況の情報連携、救急、産科医の確保を進めるなどし、状況は相当改善しましたが、それでも都市部では依然として人口増加、取り分け高齢人口の増加などにより、救急需要の増大そのものが続いており、救急医療現場の負担は相当のものと言えます。
そんな問題意識の中から、最初にお話した聖マリアンナ医科大学での実証事業に関わっています。
前置きが長くなってしまった感がありますが、そもそも「健康」とは何かということについて、少し考えてみたいと思います。
まずお尋ねしたいのが、皆さんご自身は「健康」ですか?ということです。
逆に私が同じ質問をされたらとても戸惑います。
身体を鍛えるためにジムに行くくらい元気ですが、定期的にかかりつけ医のところにも行かねばなりませんし、仕事も家庭も含めて過重な負担感を感ずることも多々あります(皆さんも同じかもしれませんが…)。本当に健康か、と言われると「YES」と断言出来ないのが正直なところです。
そもそも「健康」の定義とは一体何でしょうか。
健康について初めてまとまった概念が示されたのは1948年に設立された世界保健機関(WHO)による「身体的・精神的・社会的に完全に良好な状態であり、たんに病気あるいは虚弱でないことではない」(憲章前文)と言われています。
更にWHOでは1999年に健康とは「身体的・精神的・霊的・社会的に完全に良好な動的状態であり、たんに病気あるいは虚弱でないことではない」という提案を行い(審議されていないものの)世界共通の考え方として浸透しています。
いずれにせよ、ポイントは、「身体的、精神的に良好か否か」だけでなく、「社会的にも良好な状態である」というところです。幾ら心身が元気あっても、置かれた社会的な状況も含めて良好な状態か否か、とうことです。意外とハードルが高いことだと思いませんか?
SDGs目標に再び戻ってみましょう。「健康」とは「社会的にも完全に良好な状態である」ということから、複合的に他の目標とも関係していくことになります。
例えば、目標8「働きがいも経済成長も」では「強制労働や奴隷制、人身取引の根絶」「若者、障害者を含むすべての男性及び女性の、完全かつ生産的な雇用及び働きがいのある人間らしい仕事」を実現することも求められています。これらが実現出来ていな状況にいる人々は、「社会的に完全に良好な状態」にいるとは言えないと思います。
更に、目標11「住み続けられるまちづくりを」を見てみましょう。
「女性、子ども、障害者及び高齢者のニーズに特に配慮し、公共交通機関の拡大などを通じた交通の安全性改善により、すべての人々に、安全かつ安価で容易に利用できる、持続可能な輸送システムへのアクセスを提供する。」
「女性、子ども、高齢者及び障害者を含め、人々に安全で包摂的かつ利用が容易な緑地や公共スペースへの普遍的アクセスを提供する。」という個別目標にある通り、あらゆる人にとって住み良いまちづくりを行うことは、人々の健康的な暮らしと大きく関わっています。
このように健康とは大変広い概念であり、社会状況をトータルに改善していかなければ達成出来ないことが分かって頂けるのではないでしょうか。
現在、新型コロナ感染症の世界的拡大が止まらず危機的な状況が続いています。ワクチンが接種出来ない国・地域の人々も多数います。個人の健康は勿論、社会的にも健康な状態を守っていく為に、皆で知恵を総動員していく必要がありますね。
今日は、SDGsで掲げられている「健康」について触れさせて頂きました。
皆さんもこの機会に是非、先ずはご自身の現在の心身の状態が健康であるのか、改善していくとしたら何が必要か、更に自らを取り巻く社会状況も含めて自分自身が完全に健康な状態にある、と言えるのか否か、改めて考えて頂きたいと思います。
公共政策本部では、今後、大きな広がりを持つと言われている医療DX、ヘルスケア事業の分野へ積極的にチャレンジしていきたいと思っています。ご興味を持たれた方は是非、ご連絡頂けると嬉しく思います。お付き合い頂き、大変有難うございました。