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SDGsとESGは知っているけど、意外と知らないESD

あけましておめでとうございます。公共政策本部の坪内と申します。

今回はSDGsの中の、教育分野のお話です。

私は元々システム開発系のプロジェクトマネージャー出身ですが、3年間、文部科学省でプログラミング教育に携わったのがご縁で、いまのお仕事をさせて頂いています。

SDGsとESGはよく出てきますが、ESDはあまり見かけませんよね。
今日はぜひESDを覚えて、ちょっとだけ鼻タカさんになってください。

そもそもESDとは

ESDは、Education for Sustainable Developmentの略です。

訳すと「持続可能な開発のための教育」ですね。

ESDを端的に言うと、SDGsに書かれているような社会課題を、自分ごととして考えて、身近なところから取り組むことで、課題解決につながる価値観や行動変容をもたらす教育活動です。

つまりESDは「持続可能な社会の創り手を育む教育」 、もっと簡単にすると”SDGsな人を育てる”っていうことですね。

SDGsの中にあるESD

”SDGsな人を育てる”のがESDですが、実はSDGs17の目標及び169のターゲットの中に、ESDに該当する部分があります。

それは、ゴール4(教育分野)の中の、7番目のターゲットで、下記がその訳文になります。

ゴール4:すべての人々への包摂的かつ公正な質の高い教育を提供し、生涯学習の機会を促進する

ターゲット4.7:2030年までに、持続可能な開発のための教育及び持続可能なライフスタイル、人権、男女の平等、平和及び非暴力的文化の推進、グローバル・シチズンシップ、文化多様性と文化の持続可能な開発への貢献の理解の教育を通して、全ての学習者が、持続可能な開発を促進するために必要な知識及び技能を習得できるようにする。
(外務省HPよりhttps://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/sdgs/statistics/goal4.html)

7番目以外のターゲットは、すべての子供が初等中等教育を修了するとか、初等教育を受ける準備が整うようにするとか、職業教育や高等教育への平等なアクセスを得られるようにするといった内容がメインですが、7番目は、まさに「ESDである」と位置付けられています。

すべてのSDGsに関わるESDは重要

”SDGsな人を育てる”のがESDですから、すべてのSDGsに関わるのは当然ですが、その重要性を示すものとして、ESDの国際的な実施枠組みがあります。
そもそもESDは、2002年に日本が初めて提唱し、その後、ユネスコを主導機関として国際的に推進しているのですよ。

そして現在は、「持続可能な開発のための教育:SDGs実現に向けて(ESD for 2030)」というものが、2019年11月の第40回ユネスコ総会で採択され、同年12月の第74回国連総会で承認されています。

ここでは割愛しますが、具体的な行動を示すロードマップも公表されているのです。

ここまでのESDについての説明は、ユネスコや文部科学省のページに詳しく書かれていますので、ご興味があればご覧になってください。

日本におけるESDはどうなっている?

日本では、まず環境省に「持続可能な開発のための教育に関する関係省庁連絡会議」というのがあり、この会議で国レベルでの実施計画が策定されています。

現在の計画は、令和3年5月31日に決定した、「持続可能な開発のための教育(ESD)」に関する実施計画(第2期ESD国内実施計画)です。

ここでのポイントは、「ESD関係者のみならず、持続可能な開発を実現するために活動するステークホルダーとの協働を重視し広範なパートナーシップを発展させていく」ことと、それによって「ESD for 2030」のロードマップを実行することです。

ステークホルダーは、国、地方公共団体、市民団体、企業、メディア、研究機関、学協会、学校を含む教育機関、教職員を含む個人等です。

誰しもどこかのコミュニティに参加しているわけで、無関係ではいられません。

教員向け研修や企業内研修も含まれますし、様々なコラボレーションが期待されます。

学校教育でのESDの扱いは?

日本の学校教育でのESDはどういう位置付けかというと、2017年3月に公示された幼稚園教育要領、小・中学校学習指導要領、2018年3月に公示された高等学校学習指導要領では、全体の内容に係る前文及び総則において、「持続可能な社会の創り手」の育成が掲げられています。

昨今「GIGAスクール構想」で導入された1人1台端末も、「ICT等を活用した学習環境の充実や多様な学習機会の確保に努める」ということで、ESDの一環とも言えます。

ESDは「児童生徒が自ら考える」ことが重要です。これまでの教育における「よく考えなさい」は、決まっている答えに到達するまでの「解法を考えなさい」がほとんどでした。これからは、ESDに限らず、授業のスタイルや教員の役割についても変革が求められています。

ご参考までに、ESD活動支援センターなどのサイトを見ると、すでに全国で様々な取組が行われている様子も分かります。

起業家教育にもESDが必要な時代

一方で学校の出口である社会に目を向けると、令和4年度の国の予算ではスタートアップ企業への支援も強化されています。

この起業家を育てる起業家教育(アントレプレナーシップ教育)にも、ESDが組み込まれていかなければならないと思います。

なぜなら、今やSDGsを前提とした企業理念やミッション、ビジネスモデルでなければ、時代遅れだし、生き残りが難しいからです。

東京都では、「小中学校向け起業家教育推進事業」を行っていて、素晴らしいと思いますが、この年代からESDを連動させていくと、もっと素晴らしくなると思います。

結局、私たち大人の一人一人に行動変容が必要

現在のSDGsのゴールは2030年に設定されています。

子供たちへのESDも重要ですが、2030年までの成果は、私たち大人にかかっているわけで、一日の猶予もありません。

ESD自体も自分の問題として、科学に基づいた正しい理解と行動が必要でしょう。

例えば、「飛び恥」(flying shame)ってご存じですか?

1人あたりCO2排出量が多い飛行機を多用するのは恥だという運動ですが、フランスでは、鉄道で2時間半域内の航空路線を廃止しました。(乗り換え路線を除く)

夜行列車も復活して、上々の人気だそうです。

日本で言えば、東京-新大阪は新幹線で行けば2時間半だし、羽田-伊丹路線はいらなくね?ということです。

ブルートレインが復活したら乗りたいという方も大勢いらっしゃるでしょう。私も乗りたいです。

もちろん、航空会社もSAF(バイオ燃料)や新エンジンの開発に取り組んでいますし、飛行機は必要なものですが、消費者行動から変えていきたいものです。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました!