SDGsオープンラボ「いま企業に求められる環境経営」 第3回~脱炭素 - 加速する企業の取組~ 元環境事務次官 森本英香氏による講演
こんにちは。トランスコスモスSDGs委員会オープン社内報 記事担当の菅です。
2023年2月1日付で、トランスコスモスの環境経営アドバイザーに就任された元環境事務次官である森本英香氏にSDGsオープンラボ特別編として全4講のオンライン勉強会に登壇いただきました。
■脱炭素への取り組みは義務からビジネスチャンスへ
前回の第二回では、温室効果ガスの排出を可視化するTCFDという仕組みについてご紹介いただきました。
第三回では脱炭素を単なる義務ではなく、新規ビジネスに繋げる方法と、具体的な企業の取り組みに事例についてお話いただきました。
現在、日本の企業は欧米の企業に比べて、PBR(株価純資産倍率)という企業の成長性を表す指標が低いというデータがあります。これには非財務資本である人的、知的、社会関係資本への取り組みや情報開示が遅れていることが背景にあるといわれています。
そのため、これからの日本企業は脱炭素などの環境問題に取り組むことで、株価が上がり、ビジネスチャンスを生み、生産性が上がるなどの成長要因となるので、積極的に取り組むことが求められてくるとのことです。
また、脱炭素を今後のビジネスにしていく上で考えるべき二つのポイントについてお話いただきました。
一つは「価格」「品質」に加えて「二酸化炭素排出量」で取引するかどうかを評価されるようになることです。
今後「炭素に値段がつく」、すなわちカーボンプライシングが制度化された暁には、有無を言わさず、それによって価格競争力が決まってしまいます。
二つ目は脱炭素+α(付加価値・ブランド・社会貢献)を考えることが新規ビジネスとして求められてくるというお話で、
例えば考えられるやり方として下記のようなものがあげられるようです。
①「脱炭素そのもの」をビジネスにする
例)再エネを売る、水素を売る、脱炭素コンサルで稼ぐ
②脱炭素で「付加価値」を付ける
例)炭素クレジットを売る(林業経営者等)
③「脱炭素を契機」に新しい製品・サービスを育てる
例)EV 、 ZEH (ゼロエミッションハウス※)、 ZEB (ゼロエミッションビル)を売る
※ゼロエミッションハウス:住宅の建設から生活時、解体までのライフサイクルにおけるCO2排出量をゼロにする住宅
■脱炭素に取り組む日米各社の事例
これからは脱炭素を契機に企業体質を強化する、レジリエント(強靭)な企業になっていくことが求められてきます。
そのためにはまず徹底して守りを固め、リスクを回避することが必要となります。
その事例としてインターナルカーボンプライシングという社内の炭素料金を運用して排出量を減らしている企業の事例を紹介いただきました。
インターナルカーボンプライシングとは企業内部で独自に炭素の価格を設定し、使用する炭素総額で評価して脱炭素の推進をしていく取り組みのことです。社内炭素料金は、各部門の排出量に従って実際に支払われ、その資金がサステナビリティの改善のために使用されているとのことです。
また、日本の企業でも、太陽光発電などの再生可能エネルギーを積極的に採用し、化石燃料を使わないカーボンゼロを実施するところも徐々に出てきております。例えばセブン&アイグループでは、NTTグループと提携して一部店舗で既に再生エネルギー100%の電力利用が実現できているとのことです。
脱炭素を含む環境問題は、排出量が多い一部の企業だけが取り組む話ではなく、すべての企業が喫緊に取り組まなければならない課題に変わってきました。
私たちトランスコスモスも、脱炭素を新たなビジネスの機会ととらえ、皆様と一緒に解決していきたいと思います。